CyberAgentさん主催の Graphics Academy に参加しました
はじめに
今年2月から4月にCyberAgent さん主催で行われた、Graphics Academy に参加しました。
自分はWeb系の人間で、Unityも3DCGも業務経験がなく、いままで趣味で学んできただけなのですが、
昔遊んだゲームのグラフィックスに感動したことが忘れられず、いつかは3DCGに関わる仕事がしたいと思っていました。
なので、今回の Graphics Academy の募集を見たときに、ぜひ参加したいと思い応募させていただきました。
アカデミー内での様子について
実際の様子などについては、同じく受講生であった、かもそばさんのブログに詳細にまとめられているので、こちらをご参照ください。
受講期間中に意識していたこと
このアカデミーでは、講義や課題の内容は非常にしっかりしており、それだけでも満足度はかなり高かったです。
このカリキュラムを通してグラフィックスを学ぶことはしっかりこなしていきつつも、もう少し工夫することで、より多くの人が最大限知識を吸収できるようにできるのではないかと思っていました。
- このアカデミーの目的が「グラフィックスエンジニアの育成・採用」であるため、自分含め多くの人がグラフィックスに強くなれるとよさそう
- アカデミー内で受講生同士の関わりを促進する取り組みはあまりなく、個人戦になってしまっているのをもったいなく感じた
- 自分がわからないところを他の方へ気軽に聞ける場所が欲しかったというのもあります
という気持ちから、なにかできないかと考えていました。
例えば、アカデミーでは質問用のSlackチャンネルで自由に質問することができましたが、お互い関係値があまりない状態だと気後れしやすいもので、個人的に少し質問しにくさを感じていました。
講師の方からも質問しやすくなるような工夫もありましたが、それに加えて、自分から講師の方へいくつか質問をしたり、他の方の質問にわかる範囲で回答してみたりなどを先んじてやっていくことで、他の方が同様のことを行うハードルを下げようとしてみました。
また、講義時間は基本的に講師の方の講義を聞くスタイルだったため、受講生同士で話すタイミングはあまりありませんでした。
そこで、講義とは別日で受講生同士が気軽に質問や雑談できる時間(「井戸端」という名前になってました)を設けたりもしました。
多少出しゃばってしまったところもあったかもしれませんが、結果的に井戸端の時間があって助かったという声もいただけたので、ある程度効果はあったのかなと思っています。
最終成果物
Graphics Academy では、講義で習ったことをもとに、「絵作り」を行うという最終課題がありました。
具体的なテーマは特に決まっておらず、自分が作りたいものを作る内容でした。
自分の最終的な成果物はこちらです。本当は動画でキャラの動きもついているのですが、本記事では一部をキャプチャでご紹介します。
(環境は Built-in Render Pipeline、Unity 2021.2.9f1 です)
左がポストエフェクトありの状態で、右が切った状態です。
(アセットは、CyberAgent ゲーム事業部様から、アカデミー用に提供していただいたものを使用しています。BLADE XLORD というゲームのアセットです。)
この作品を作るにあたって、モンスターハンターライズのゲーム内で流れるオオナズチというキャラクターのムービーを参考にしており、
同じような雰囲気になるように、フィルムノイズや色合いの昔っぽさ、霧っぽさなどをだすことを意識しました。
(引用元: https://youtu.be/rw9Kofz5Yyc?t=59 )
こだわった点
こだわった点を以下の2つの点で簡単に説明しようと思います。
- 全体的な色合い調整
- カスタムポストエフェクトの実装
全体的な色合い調整
参考画像に色合いを寄せるために、様々なポストエフェクトを使用しています。
例えば、Color Grading では、全体的に彩度やコントラストを下げるのに加え、
Grading Curves の Sat Vs Sat を調整することで、彩度の高い部分をさらに下げるようにもしています。
また、Channel Mixer で赤や緑のチャンネルを多めにすることで、全体的に白茶けたような色合いにしています。
Ambient Occlusion では、緑色を強めに入れることで、岩陰に苔が生えたような雰囲気を出せるようにしています。
その他、以下のポストエフェクトも使用しています。
- Vignette
- Depth of Field
- Bloom
カスタムポストエフェクトの実装
今回の絵作りで、以下2つのカスタムポストエフェクトを実装しました。
- FilmNoise ポストエフェクト
- FogLine ポストエフェクト
FilmNoise ポストエフェクトは、名前の通りフィルムノイズを表現するもので、よくある古い映画のような表現ができます。
黒い縦線部分と、小さな黒い点部分の2種類をパラメータで柔軟に調整できるようになっています。
FogLine ポストエフェクトは、まるで霧が動いていたり、風が動いているような表現をするためのポストエフェクトです。
実装自体は難しいものではありませんが、同様なエフェクトをあまりみかけないこともあり、最終発表の際に他の方からも面白いという声を多くいただけました。
これら2つの実装の詳細については、別途記事を作り解説しようと考えています。
アカデミーで学んだこと
グラフィックスに関する体系的な知識
最初にも書いた通り、自分はこのアカデミーに参加する前は独学でしか学んでおらず、グラフィックスやシェーダーに関する体系的な知識はありませんでした。
最終課題で当たり前のようにポストエフェクトを使っていましたが、このアカデミーに参加するまで触ったことがありませんでしたし、ライティングやシャドウイングの知識もほぼありませんでした。
そんな中で、ポリゴンやメッシュの話からShaderLabの書き方、ライティング、PBR、シャドウイング、ポストエフェクトと一通り体系的に学ばせていただけたのは、本当にありがたかったと思っています。(マクロの内部実装を追っていくことにも抵抗がなくなりました笑)
今後グラフィックスに関する話題がでてきても、ある程度ついていけるという自信がついたのは大きかったと思っています。
絵作りの楽しさ
今回最終課題で自分の表現したいものを決めて、そこに向けてどんな要素が必要かを考えたり、あーでもないこーでもないと試行錯誤をしているのはとても楽しかったです。
試行錯誤の中で、うまくいかない理由を深ぼることで新しい知識が得られたり、ずっとうまくいかなかった部分がうまく表現できたときの感動もあり、手探りではありながら一歩一歩進んでいる感じがありました。
途中で絵作りの方向性が変わったこともありましたが、こちらの「Unityとアセットツールで学ぶ『絵づくり』の基礎」の動画にもあるように「そのコンテンツの意図やテーマは何か」、「ユーザにどんな興味を持ってもらいたいのか」といった部分に立ち返ることで、方向性を固めていくことができました。
今後学んでいきたいこと
今回の Graphics Academy では学びきれず、今後個人的に学んでいきたいと感じた部分をあげてみます。
負荷計測
アカデミーではまず基本をしっかり学ぶことが優先されたので、負荷や性能計測の方法についての詳しい講義はほとんどなく(フレームデバッガの使い方については触れられました)、自分で興味があったり疑問がでた際に講師の方に質問するくらいでした。
今後、もし業務でグラフィックスに携わっていく場合には負荷計測は当たり前のように行っていくと思うので、計測手法(フレームデバッガ、Profiler、PIXなど) であったり計測後の改善方法をしっかり身につけておきたいと思っています。
表現の引き出しを増やす
最終課題の絵作りは、楽しい面もありつつ、なかなか思い通りの表現にならない大変さもありました。
最終課題を進める際、自分はモンスターハンターライズから参考とする絵を探し、その後どんな要素が使われているかを分析して進めていきました。
しかし、この「どんな要素が使われているかを分析」できるようになるためには、「何を使えばこの表現ができそうか」を自分の中でわかっている必要がありました。
アカデミーの講義でもいくつか表現の手法は学びましたが、まだまだこの部分の引き出しが少ないと感じるため、今後もっと知識を増やしていきたいと思っています。
そのために、まずは他の受講生の方の最終成果物を読み解いていきつつ、
世の中のグラフィックス周りの情報にアンテナを張り、それがどういう実装によって実現されているかを知ることで知識を増やせればと思います。
チームでの絵作り
これは個人で学べるものではありませんが、業務になればチームで絵作りを考えることになると思うので、複数人での絵作りもやってみたいと思っています。
今回個人での絵作りの学びとして「そのコンテンツの意図やテーマは何か」を考えるというものがありましたが、チームでの絵作りになれば、この部分からチームで議論していくことになると思うので、作業の進め方もガラッと変わってしまいそうです。
もし機会があれば、より実践に近いような形で絵作りを行うことができたらと思っています。
さいごに
このアカデミーを受講できたことで、今後のインプットの効率がかなり上がったと感じています。いままで「そうなんだ」で終わっていたことをより深く考えられるようになりました。
よりよい表現をできるようになるために、アカデミーが終わっても引き続きインプットとアウトプットはしていきたいと思っています。
今回、Graphics Academy を開催してくださった、運営のみなさん、講師陣のみなさん、貴重な機会を本当にありがとうございました。
受講生のみなさんとも、Slackや井戸端会を通じてわからないところを助け合ったり、雑談しながら交流できたりなど、貴重なつながりを持つことができました。ありがとうございました。
このつながりを切らさないよう、定期的に何か交流を図っていきたいですね。